相互尊重
コミュニケーション
理論
mutual respect communication
No. 5
総合実践・ディベート

相互尊重コミュニケーション講座
第5回「総合実践・ディベート」

学習目標

この講座が終わる頃、次の3つができるようになります:

  1. ディベートの中で4つの原則を使い、振り返りで各項目3点以上をとれる
  2. 立場を入れ替えた後、反対意見の裏にある気持ちや大切にしていることを言葉にできる
  3. 日常で4原則を続けるための「30日間プラン」を作り、仲間に宣言する
4つの原則は、順番に重ねることで「相互尊重」というひとつの姿勢になる。
01

オープニング

チェックイン

全5回の最終回です。今の気持ちを一言で共有しましょう。

アイスブレイク

「第1回の自分に手紙を書くなら、一言何と言いますか?」

一人ずつ順番に共有します。短くて大丈夫です。

前回の宿題振り返り

第4回の宿題について、2-3名にシェアしてもらいます。

開いた質問の実践日記

ディベート下調べ

02
ワーク1:4原則振り返りペアワーク

ねらい

4回で学んだ原則を振り返り、自分の中でのつながりを見つけます。

個人ワーク:スキルマップ記入
原則できる意識すればできるまだ難しい
傾聴と共感
自己表現
境界線
問い
ペアで振り返り

ペアを組み、交互に聴き合います。

質問:

  1. 「4つの原則の中で、日常に一番変化をもたらしたのは?」
  2. 「その原則を使って、実際にどんなことがありましたか?」
  3. 「まだ苦手だなと感じる原則はありますか?」

聴く側は、第1回で学んだ傾聴を実践しましょう。

全体シェア

3-4名に、ペアの相手から聴いた話を紹介してもらいます。

「○○さんは、△△の場面で□□を実践されたそうです」

Point

相手の話を紹介することで、「聴けていたかどうか」が自然と分かります。

03

振り返り対話

グループワーク

4-5名のグループに分かれ、次の問いについて話し合います。

「4つの原則は、日常の会話の中でどうつながっていると思いますか?」

模造紙やホワイトボードに、4つの原則の関係を自由に図にしてみましょう。

全体シェア

2-3グループに発表してもらいます。

ファシリテーターの補足

4原則は、会話の流れに沿って積み重なっていきます。

傾聴と共感(受けとめる力)

↓ 相手を理解してから

自己表現(伝える力)

↓ 自分の気持ちを伝えながら

境界線(ちょうどいい距離を保つ力)

↓ お互いの領域を大切にしつつ

問い(ともに成長する力)

↓ 相手の可能性を引き出す

= 相互尊重コミュニケーション

04

「自分らしく生きられている人」とは

この4つが重なったとき、心理学者カール・ロジャーズが「自分らしく生きられている人」と呼んだ姿に近づきます。それは完璧な人のことではありません。自分の気持ちをありのままに感じ取れて、「こうすべき」ではなく「こうしたい」から行動を選べる人のことです。この講座で学んできたことは、まさにその姿を目指す道のりだったのです。

完璧であることではなく、自分自身であり続けること。

レクチャー:4原則の統合とディベートの基本

1. 4原則はセットで使う

日常の会話では、4つの原則は1つの会話の中で行ったり来たりしながら自然に使います。

例:子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき

原則実践例
傾聴と共感「そうなんだ。行きたくないんだね」とまず受けとめる
問い「何があったの?」「どんな気持ち?」と聴く
自己表現「お母さんは心配なんだ」と私メッセージで伝える
境界線「でも最終的に決めるのはあなただよ」と相手の領域を大切にする

大切なのは「どの原則を使おう」と頭で考えることではなく、相手を大切にしながら話そうという姿勢です。自転車に乗るとき、いちいち足の動かし方を考えないのと同じです。くり返し練習するうちに、意識しなくてもできるようになります。

05

2. 4原則を体の中で感じてみる

目を閉じて、最近うまくコミュニケーションが取れた場面を1つ思い浮かべてください。

3. ディベートとは

ディベートと聞くと「相手を言い負かす」イメージがあるかもしれません。しかし、この講座で行うのは「相互尊重ディベート」です。4原則を全部使う総合練習です。

ディベートでは、相手の話を聴きながら自分の意見も組み立て、感情的にならずに冷静に対話するなど、たくさんの力を同時に使います。筋トレと同じで、負荷の高い場面で練習すると、日常の会話が「楽に」感じられるようになります。

一般的なディベート vs 相互尊重ディベート

一般的なディベート相互尊重ディベート
目的勝ち負けを決めるいろいろな見方を知る
聴き方反論の材料を探して聴く共感しながら聴く
伝え方「あなたは間違っている」「私はこう考えます」
距離感意見=人格として攻撃意見と人格を分ける
06

4. 相互尊重ディベートの5つのルール

  1. 傾聴と共感:相手が話しているときは最後まで聴く。うなずきと相づちを忘れない
  2. 自己表現:「私は~と思います」の私メッセージで意見を述べる
  3. 境界線:意見が違っても、相手の人柄を否定しない。「意見」と「人」を分ける
  4. 問い:相手の意見に対して「もう少し聴かせてください」と敬意を持って問いかける
  5. 自分への問い:ディベート中、自分に問いかける ── 「今の私は聴けているだろうか?」
追加ルール

5. なぜ立場を入れ替えるのか

今日のディベートでは、第2ラウンドで賛成・反対の立場を入れ替えます。頭で「相手の気持ちを想像する」のと、実際に相手の立場に立って話してみるのでは、理解の深さがまったく違います。自分とは違う立場から考えて話すことで、相手の立場で考える力がぐっと深まります。

意識してほしいこと

自分の本心とは違う立場に立つのは、最初は気持ちが悪いかもしれません。でもそれは、「相手の世界を内側から見ている」ということです。この居心地の悪さの中にこそ、大きな気づきがあります。

07
ワーク2:ディベート準備
難しそうに聞こえるかもしれませんが、大丈夫。5回分の練習が皆さんの中にあります。楽しんでやってみましょう。

テーマ

以下から1つ選ぶか、グループで相談して決めます。

テーマ選びの際、参加者の状況を考えてください。最もリスクが低いのは「子どもにスマホは持たせるべきか?」です。いずれのテーマでも、開始前に「これは練習です。あなた個人の選択を評価する場ではありません」と伝えてください。

準備の進め方

ステップ1:チーム分け
ステップ2:意見整理

チーム内で話し合い、ワークシートを使って整理します。

08
ステップ3:4原則チェック
ステップ4:質問を準備する
ワーク3:ディベート実践 第1ラウンド

進行フォーマット

1. 賛成側 立論

相手チームは傾聴。メモを取りながら聴く

2. 反対側 立論

相手チームは傾聴。メモを取りながら聴く

3. 質疑応答

交互に質問と回答。全員が最低1回は発言する

4. 最終弁論 → 5. 拍手で終了

相手の意見を踏まえた最終主張の後、敬意を込めて拍手

09

中間振り返り

全体シェア

「ディベート中、4原則のうちどれが一番難しかったですか?」

「次はこうしてみよう、という工夫を1つ考えてください。第2ラウンドで試しましょう。」

ワーク4:ディベート実践 第2ラウンド

第2ラウンドの特徴

  1. 同じテーマで、賛成・反対の立場を入れ替える
  2. 第1ラウンドで「難しかった」と感じた原則を特に意識する

同じテーマ、入れ替わった立場で、チーム内で意見を整理してから、第1ラウンドと同じ流れで進めます。

立場の入れ替えに強い抵抗を感じる参加者がいた場合は、「見学する」という選択肢を出してください。パスできることも、自分の境界線を守る実践です。

10

ディベート総合振り返り

全体対話

「自分と反対の立場に立ってみて、何を感じましたか?」

「ディベートを通じて、相互尊重コミュニケーションについて新しく気づいたことは?」

「この体験を日常に持ち帰るとしたら、どんな場面で使えそうですか?」

ファシリテーターからのまとめ

ディベートは「正解を見つける」ものではありません。違う見方を理解し、自分の考えを深めるためのものです。

反対の立場に立ったとき、「こういう考え方もあるのか」と感じた瞬間がありませんでしたか? それこそが、傾聴と共感の本質です。

意見が違う相手と出会ったとき、まず聴き、自分を伝え、境界線を保ち、問いかける。この姿勢そのものが、相互尊重コミュニケーションです。

11

5回の学びで何ができるようになったか

できるようになったこと
第1回
傾聴と共感
体の感覚に気づく力がついた。感情に名前をつけて、気持ちを落ち着ける方法を身につけた
第2回
自己表現
「自分が何を感じているか」に気づく力がついた。体の感覚を気持ちの手がかりにできるようになった
第3回
境界線
「自分の問題? 相手の問題?」の区別ができるようになった。罪悪感を「変化のサイン」と考えられるようになった
第4回
問い
質問で自分の注意の向け方を変える方法を身につけた。質問が相手の考えを引き出す力を実感した
第5回
統合
ディベートで4原則を同時に使えた。立場を入れ替えることで、共感が「頭で分かる」から「体で感じる」レベルに深まった
くり返し練習することで、できることは少しずつ増えていきます。30日間のプランは、この力をさらに育てるためのものです。
12
ワーク5:アクションプラン作成・宣言

ねらい

5回の学びを日常で続けるための計画を立て、仲間に宣言します。

5回の学びで私はどう変わった?

まず、講座開始前(第1回で記入した自分の状態)と今を比べてみましょう。

項目開始前(1-10点)今(1-10点)
傾聴力  点  点
自己表現力  点  点
境界線の明確さ  点  点
問いかけ力  点  点
人間関係の満足度  点  点

一番変わったこと:

これからの自分へのメッセージ:

13

個人ワーク:「なぜ」から始める目標の立て方

目標を立てるとき、「何をするか」から考えがちです。でも大切なのは、まず「なぜそうしたいのか」を考えること。「なぜ」→「どうやって」→「何を」の順番で考えると、「やらなきゃ」ではなく「やりたい」という気持ちで続けられます。

注意

第4回で「なぜ?をどうすれば?に変えよう」と学びましたね。でもここでは「なぜ」を使います。これは自分の深い気持ちを探る問いです。相手を追いつめる「なぜ」とは別物です。

  1. なぜ:あなたはなぜ、相互尊重コミュニケーションを学び続けたいのですか?
  2. どうやって:4原則のうち、特にどの原則を軸にしますか?
  3. 何を:具体的に何をしますか?

ペアシェア・宣言

バディ(学習パートナー)とプランを共有します。

  1. プランを伝える(自己表現を実践)
  2. 聴く側は、うなずきと繰り返しで受けとめる(傾聴を実践)
  3. 「それいいね! こんなことも試してみたら?」と問いかける(問いを実践)
  4. お互いのプランを大切にする(境界線を実践)

声に出して宣言することで、目標がはっきりします。自分の声で聴くことで、心に刻まれます。他の人に伝えることで、「やるぞ」という気持ちが強くなります。

14

クロージング・修了セレモニー

修了サークル

全員で円になります。

ファシリテーターからのメッセージ

コミュニケーションは一生続く学びです。完璧にできる必要はありません。「あ、今聴けてなかったな」と気づけること自体が、もう大きな成長です。

あなたは、もうできています。

5回の講座で、あなたは実際に傾聴をし、私メッセージで伝え、境界線を引き、問いかけました。「できた」という体験は、すでにあなたの中にあります。

日常に戻って「あれ、うまくいかないな」と思うことがあっても大丈夫。「自分にはできる」と知ったことが大事です。「私は相互尊重コミュニケーションができる人間だ」と、心の中でくり返してみてください。

15

チェックアウト

一人ずつ、円の中で共有します(一言30秒以内で大丈夫です)。

「この講座を終えて、これから人生で持ち続けたい"問い"は何ですか?」

テクニックやスキルはいつか忘れるかもしれません。でも、1つの良い問いは、一生あなたを導き続けます

全員が話し終わったら、みんなで拍手を送り合いましょう。

修了

進行手順

  1. 全員で輪になる
  2. 一人ずつ一言(チェックアウトの問いに答える)
  3. 修了証の授与

その他

16

ワークシート

ワークシート1:ディベート準備シート

テーマ:

私たちの立場: ☐ 賛成    ☐ 反対

チームメンバー:


主張のポイント(3つまで)

1.

2.

3.

17

ワークシート1:ディベート準備シート(続き)

私メッセージでの表現

「私たちは__________と考えます。

なぜなら______________だからです」

相手チームへの質問(開いた質問で)

1.

2.

役割分担

立論担当
質問担当
まとめ担当
18

ワークシート2:ディベート振り返りシート

ラウンド: ☐ 第1ラウンド    ☐ 第2ラウンド

テーマ:

立場:

4原則の自己評価

傾聴と共感:相手の意見を最後まで聴けた

1 ──── 2 ──── 3 ──── 4 ──── 5

自己表現:私メッセージで自分の意見を伝えられた

1 ──── 2 ──── 3 ──── 4 ──── 5

境界線:意見と人柄を分けて対話できた

1 ──── 2 ──── 3 ──── 4 ──── 5

問い:相手の考えを深める問いかけができた

1 ──── 2 ──── 3 ──── 4 ──── 5

うまくいったこと

難しかったこと → 次にこうしてみたい

19

ワークシート3:30日間アクションプラン

30日間 相互尊重コミュニケーション アクションプラン

名前:__________    日付:____年__月__日


「なぜ」から始める目標

なぜ ── なぜ学び続けたいのか?

どうやって ── 特に伸ばしたい原則は?

☐ 傾聴と共感   ☐ 自己表現   ☐ 境界線   ☐ 問い

その理由:

何を ── 具体的に何をするか?

30日間プラン(「~している」と現在形で書きましょう)

第1週(1-7日目):まず1つだけ、小さく始める

「私は__________________をしている」

第2週(8-14日目):もう1つ追加する

「私は__________________も楽しんでいる」

20
第3週(15-21日目):チャレンジする場面を決める

「_____の場面で、4原則を意識している自分がいる」

第4週(22-30日目):振り返り、自分の変化を味わう

宣言(「~している」と現在形で)

私は、_________さんに宣言します。

「私は________________________な人間です」


バディとの約束

バディの名前:__________

連絡方法: ☐ LINE   ☐ メール   ☐ その他(______)

連絡する曜日:毎週___曜日

もし数日間できなくても

「また始めればいい」と思い出してください。
1日でもできた日があれば、それが成功です。

21

全体振り返りシート

名前:__________

全5回を通じた自己評価

傾聴と共感:相手の気持ちを受けとめて聴けるようになった

  受講前   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5     受講後   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5

自己表現:私メッセージで気持ちを伝えられるようになった

  受講前   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5     受講後   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5

境界線:自分と相手の境界線を意識できるようになった

  受講前   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5     受講後   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5

問い:相手の成長を助ける問いかけができるようになった

  受講前   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5     受講後   1 ── 2 ── 3 ── 4 ── 5


各回で心に残っているキーワード

第1回(傾聴と共感)
第2回(自己表現)
第3回(境界線)
第4回(問い)
第5回(統合)

5回の講座で一番印象に残っていること

この講座で得た「一番の宝物」

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30日後の自分への問い

30日後、自分に問いかけたい質問を1つ書いてください。
答えは、30日後の自分が見つけてくれます。
(この紙を封筒に入れて密封し、30日後に開封してください)


講師へのメッセージ(ありがとう、リクエスト、何でもどうぞ)


30日後の振り返り

一番成長したと思う原則は?

自分のコミュニケーションで変わったことは?

心の余裕の変化

第1回 __% → 第5回 __% → 30日後 __%

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参考文献(全5回共通)

© 一般社団法人 相互尊重コミュニケーション協会
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