この講座を終えると、次の3つができるようになります:
前回の宿題を振り返ります。
宿題ができなかった方を責めないでください。「できなかったこと自体も気づき」として扱います。
「今まで一番心に残っている『質問』は何ですか?」
誰かに聞かれた質問でも、本で出会った質問でも構いません。
人生を変えるのは「答え」ではなく「問い」です。良い質問をされた瞬間を、私たちは何年も覚えています。今日は「問い」の技術を学びます。第1回〜第3回の「聴く・伝える・守る」の土台の上に、「引き出す力=問い」を加えます。
ネットで調べものをするとき、検索窓にキーワードを入れますよね。すると関係する情報がたくさん出てきます。私たちの脳にも同じ仕組みがあります。
第1回〜第3回で学んだとおり、脳には「今、何に注目するか」を選ぶフィルターがあります。意識したものだけが目に入り、それ以外は見えなくなる。これが脳の検索エンジンです。
たとえば ──
質問は、この検索エンジンにキーワードを入れる行為です。
質問を変えれば、見える世界が変わります。「なぜダメなんだろう?」と問うと、解決策は見えなくなります。「どうすればうまくいく?」と問い直すと、隠れていた答えが見え始めます。
「これをやって」と指示されたときと、「あなたはどうしたい?」と質問されたとき。脳の使い方がまったく違います。
やらされるより自分で決めた方が頑張れる。これは誰もが体感していることです。質問は、相手に「自分で考えて選ぶ」機会を与えます。だから指示よりも強いやる気を生むのです。
「宿題やりなさい!」と指示するのと、「今日の宿題、どこから始めたい?」と聞くのでは、子供の反応がまったく違います。「この企画を修正して」と言うのと、「もっと良くするならどこを変える?」と聞くのでは、出てくるアイデアの質が変わります。
同じ「なぜ?」でも、好奇心からの「なぜ?」は相手の考えを深めます。責めるような「なぜ?」は相手の心を閉ざします。
| なぜ? | どうすれば? | |
|---|---|---|
| 脳が探すもの | 過去の原因 | 未来の解決策 |
| 気持ち | 自分を責める・言い訳する | 前向き・やる気が出る |
| 行動 | 止まる | 動き出す |
WHYチャレンジ(1週間、「なぜ?」を「どうすれば?」に置き換えよう)
今日から1週間、「なぜ?」と言いたくなったら「どうすれば?」「何があれば?」に置き換えてみましょう。これだけで会話の質が変わります。
ただし、「なぜ?」が力を発揮する場面もあります。
| 「なぜ?」が逆効果な場面 | 「なぜ?」が効果的な場面 |
|---|---|
| 相手を責める場面 | 大切にしていることを深掘りする場面 |
| 過去の失敗を問い詰める場面 | 好奇心で相手を理解したい場面 |
「なぜ?」のトーンが追及なら逆効果、探求なら効果的。まずはチャレンジで「どうすれば?」の力を体感しましょう。
2400年前、哲学者ソクラテスは答えを教えるのではなく、問いかけることで相手自身が答えに気づく方法を使いました。これを「産婆術」と言います。
産婆さんが赤ちゃんを「作る」のではなく「取り上げる」のと同じように、相手の中にある知恵を「引き出した」のです。
自分で考えた答えの方が記憶に残り、行動にもつながりやすい。これは現代の心理学でも確かめられています。
お客さんに「何が欲しいですか?」と聞けないと、良い商品を作っても売れません。家族に「あなたはどうしたい?」と聞けないと、すれ違いが生まれます。
良い質問ができる人は、相手から信頼されます。相手の力を引き出し、お互いが成長する関係を作れます。質問をしない人は、どれだけ思いやりがあっても関係がうまくいきにくいのです。
「今から10秒間、この部屋の中で赤いものをできるだけたくさん見つけてください」→ 10秒間、周囲を見回す
「では目を閉じてください。この部屋に青いものはいくつありましたか?」→ ほとんどの人が思い出せない
目を開ける。青いものがたくさんあることに気づく。
「赤いもの」を探しているとき、青いものは見えなくなっていました。脳は「問われたこと」だけを見つけようとします。だから、どんな質問を持つかで見える世界が変わるのです。
「なぜ?」型の質問を3つ書き出し、「どうすれば?」型に変換します。
| 「なぜ?」型 | 「どうすれば?」型 |
|---|---|
| (例)なぜ子供は言うことを聞かないんだろう | どうすれば子供が自分から動きたくなるだろう |
| 1. | 1. |
| 2. | 2. |
| 3. | 3. |
ペアでワークシートを共有します。
気づいたことを2〜3組、全体で共有します。
心がさまよっている時間が多いほど幸福感が低い、という研究結果があります。私たちの頭の中では、いつもひとりごとが流れています。
「ミスするな!」「ちゃんとやらなきゃ!」── こういう命令口調のひとりごとが多いと、体が固くなり、本来の力が出せません。ガルウェイという人は、頭の中に「うるさく指示する自分」と「本来の力を持つ自分」の2人がいると考えました。命令する自分を静かにさせると、本来の力が出てきます。
静かにさせる方法は、命令を質問に変えることです。
「私は人の話を上手に聴ける」と思っている人は、自然と良い質問が浮かびます。でも「私は口下手だ」と思っていると、どんなテクニックを学んでも使えません。
「私は相手の力を引き出す良い質問ができる人間だ」。この新しい自分のイメージを、今日のワークで育てましょう。
第3回でも取り組みましたね。今日はこれを「質問の力」でさらに深めます。
| しなければならない(義務) | したい(意欲) |
|---|---|
| 報告書を書かなければ | チームに伝えたい |
| 子供の送り迎えをしなければ | 子供との時間を大切にしたい |
| あの人に連絡しなければ | あの人との関係を良くしたい |
言葉を変えるだけで、同じ行動でもやる気の質が変わります。「しなければ」に気づいたら、自分にこう問いかけてみてください。
義務の奥には、必ず本当の「したい」が隠れています。それを見つけた瞬間、同じ行動がまったく違うエネルギーで動き出します。
「自分にはできる力がある」と信じられること。これが「"自分にはできる"という気持ち」です。自己肯定感(自分には価値がある)とは少し違い、まだやったことがなくても「自分ならできる」と信じられる力のことです。
1. 未来の自分から見る
2. 過去のうまくいった体験を引き出す
3. 強みを見つける
毎朝、自分に1つ質問を投げかけるだけで、その日1日の「見え方」が変わります。
「しなければならない」を3つ書き出し、「したい」に変換してください。
| # | しなければならない | したい |
|---|---|---|
| 例 | 毎日運動しなければならない | 健康でいたいから体を動かしたい |
| 1 | ||
| 2 | ||
| 3 |
頭に浮かびやすいネガティブなひとりごとを書き出し、質問と宣言に変換してください。
| # | ネガティブな ひとりごと | 問いかけに変換 | 宣言 (「私は〜だ」の形) |
|---|---|---|---|
| 例 | 私には才能がない | どうすれば強みを活かせる? | 私には人の力を引き出す才能がある |
| 1 | |||
| 2 |
明日の朝から自分に投げかけたい質問を1つ作ってください。
私の朝の問いかけ:
「
?」
パートA〜Cをペアで共有します。
Aさん「最近、仕事が大変でさ」
Bさん「そうなんだ、大変なんだね」(聴く)
Bさん「それはきついね」(伝える)
Bさん(アドバイスを押し付けない)(守る)
Bさん「あなたはどうしたいと思ってる?」(引き出す)
このたった一言で、Aさんは「自分を尊重してもらえている」と感じます。
「何があったの?」「具体的にはどんな状況?」
「その時、どんな気持ちだった?」「体のどこかに感じるものはある?」
「本当に大切にしていることは何?」「制約がなかったら、本当はどうしたい?」
この問いの後には沈黙が生まれます。焦らず待ちましょう。
気持ちが言葉にならない時は、体に聴く方法もあります。「今、体のどのあたりに何か感じますか?」と問いかけると、頭では気づけなかった本当の気持ちが見つかることがあります。
| # | 要素 | 良くない例 | 良い例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自由に答えられる | 「良かった?」 | 「どう感じた?」 |
| 2 | 具体的である | 「最近どう?」 | 「今週一番嬉しかったことは?」 |
| 3 | 気持ちに向かう | 「何があったの?」 | 「その時どんな気持ちだった?」 |
| 4 | 未来に向かう | 「なぜそうなったの?」 | 「これからどうしたい?」 |
| 5 | 相手を信頼する | 「こうした方がいいよ」 | 「あなたはどう思う?」 |
良い質問をすると、相手は考え込みます。この沈黙を怖がらないでください。沈黙は、相手が答えを探している大切な時間です。
目的:質問だけで相手の考えを引き出す対話を体験する。
深い感情に触れることがあります。話したくないことは話さなくてOK。「パス」もいつでも使えます。
3人1組で、以下の役割をローテーションします。
| 役割 | やること |
|---|---|
| 聴き手 | 質問だけで相手の考えを引き出す。アドバイスはしない |
| 話し手 | 今気になっていること、考えたいことを話す |
| 観察者 | 2人のやりとりを観察し、気づきをメモする |
「今日は何について話したいですか?」
「最近、気になっていることは?」
「具体的にはどんな場面で?」
「もう少し聞かせてください」
「その時、どんな気持ちでしたか?」
「今、体のどこかに何か感じますか?」
「それはあなたにとってどんな意味がありますか?」
「本当に大切にしていることは何ですか?」
「理想の自分ならどうしますか?」
「前にうまくいった経験は?」
「本当はどうなりたいですか?」
「最初の一歩として何ができそう?」
| 観察ポイント | メモ |
|---|---|
| 聴き手はどんな質問をしていたか? | |
| 特に効果的だった質問はどれか? | |
| 3レベル(事実・感情・意味)のどれが多かったか? | |
| 話し手の表情や態度はどう変化したか? | |
| 沈黙の扱い方はどうだったか? |
当事者同士では気づけないことを見つけ、伝えること。フィードバックはまず良かった点を伝え、その後に気づきを共有しましょう。
目を閉じて、1年後の理想の自分をイメージします。
イメージがありありと浮かぶほど、脳はそれを「現実」として受け取り始めます。すると脳の検索エンジンが「その未来に近づく情報」を優先的にキャッチするようになります。
1年後の自分になりきって、以下に答えてください。
1年後の私から、今の私へ
一番伝えたいことは何?
今すぐ始めてほしいことは何?
手放していいものは何?
1. 質問は脳の検索エンジンを動かす
2. 心の中のひとりごとが自分を作る
3. 3種類の問いを使い分ける
4. 問いかけ的な対話の力
| 回 | 力 | 核心 |
|---|---|---|
| 第1回 | 聴く力 | 心の余裕を持ち、相手の話を聴く |
| 第2回 | 伝える力 | 「私は」を主語にして伝える |
| 第3回 | 守る力 | 自分と相手の領域を尊重する |
| 第4回 | 引き出す力 | 「あなたはどう思う?」で共に成長する |
1. 今日一番印象に残ったことは何ですか?
2. 3人組の問いかけ練習で気づいたことは?
(聴き手として)
(話し手として)
(観察者として)
3. 明日から使いたい質問を1つ書いてください。
4. 今の「心の余裕」を%で表すと?
____% (第1回: ___% → 第2回: ___% → 第3回: ___% → 第4回: ___%)
| 日付 | 誰に? | どんな質問をした? | 相手の反応は? | 気づいたこと |
|---|---|---|---|---|
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次回(第5回)はディベートを行います。テーマについて賛成・反対の両方の立場から意見を考えてきてください。
テーマ:(講師より次回までに告知)
「自分とは違う意見の人に出会ったとき、どんな質問を投げかけたいですか?」
4つの力を総動員して「相互尊重ディベート」に挑戦します。ここまでの4回で、あなたはもう準備ができています。