相互尊重
コミュニケーション
理論
mutual respect communication
No. 4
問い

相互尊重コミュニケーション講座
第4回「問い」

学習目標

この講座を終えると、次の3つができるようになります:

  1. 「なぜ?」型の質問を「どうすれば?」型に言い換えて使える
  2. 3人組の問いかけ練習で、3つのレベルの問いを使い分けられる
  3. 宿題の「質問日記」に、1日1つ以上の実践を記録できる(できる日だけでOK。3日以上を目指しましょう)
良い質問は、相手の中にある答えを引き出す。
答えを教えることではない。
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オープニング

第3回の宿題シェア

前回の宿題を振り返ります。

宿題ができなかった方を責めないでください。「できなかったこと自体も気づき」として扱います。

アイスブレイク:今日の問いかけ

「今まで一番心に残っている『質問』は何ですか?」

誰かに聞かれた質問でも、本で出会った質問でも構いません。

進め方

  1. 1分間、静かに思い出す
  2. 隣の人とペアで共有する
  3. 2〜3組、全体で発表

講師のまとめ

人生を変えるのは「答え」ではなく「問い」です。良い質問をされた瞬間を、私たちは何年も覚えています。今日は「問い」の技術を学びます。第1回〜第3回の「聴く・伝える・守る」の土台の上に、「引き出す力=問い」を加えます。

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セクション1:質問の力

1-1. 問いは「脳の検索エンジン」を動かす

ネットで調べものをするとき、検索窓にキーワードを入れますよね。すると関係する情報がたくさん出てきます。私たちの脳にも同じ仕組みがあります。

第1回〜第3回で学んだとおり、脳には「今、何に注目するか」を選ぶフィルターがあります。意識したものだけが目に入り、それ以外は見えなくなる。これが脳の検索エンジンです。

たとえば ──

質問は、この検索エンジンにキーワードを入れる行為です。

ポイント

質問を変えれば、見える世界が変わります。「なぜダメなんだろう?」と問うと、解決策は見えなくなります。「どうすればうまくいく?」と問い直すと、隠れていた答えが見え始めます。

03

1-2. 指示と質問 ── 受け身 vs 自分ごと

「これをやって」と指示されたときと、「あなたはどうしたい?」と質問されたとき。脳の使い方がまったく違います。

やらされるより自分で決めた方が頑張れる。これは誰もが体感していることです。質問は、相手に「自分で考えて選ぶ」機会を与えます。だから指示よりも強いやる気を生むのです。

質問は相手の脳を「自分ごと」モードに切り替えるスイッチ

「宿題やりなさい!」と指示するのと、「今日の宿題、どこから始めたい?」と聞くのでは、子供の反応がまったく違います。「この企画を修正して」と言うのと、「もっと良くするならどこを変える?」と聞くのでは、出てくるアイデアの質が変わります。

04

1-3. 「なぜ?」と「どうすれば?」

大切なポイント

同じ「なぜ?」でも、好奇心からの「なぜ?」は相手の考えを深めます責めるような「なぜ?」は相手の心を閉ざします

原因を追う「なぜ?」

  • なぜできないの?
  • なぜいつもこうなるの?

解決を探す「どうすれば?」

  • どうすればできるようになる?
  • どうすればうまくいく?
なぜ?どうすれば?
脳が探すもの過去の原因未来の解決策
気持ち自分を責める・言い訳する前向き・やる気が出る
行動止まる動き出す

使い方の例

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1-3. 「なぜ?」と「どうすれば?」(続き)

WHYチャレンジ(1週間、「なぜ?」を「どうすれば?」に置き換えよう)

今日から1週間、「なぜ?」と言いたくなったら「どうすれば?」「何があれば?」に置き換えてみましょう。これだけで会話の質が変わります。

ただし、「なぜ?」が力を発揮する場面もあります。

「なぜ?」が逆効果な場面「なぜ?」が効果的な場面
相手を責める場面大切にしていることを深掘りする場面
過去の失敗を問い詰める場面好奇心で相手を理解したい場面

「なぜ?」のトーンが追及なら逆効果、探求なら効果的。まずはチャレンジで「どうすれば?」の力を体感しましょう。


1-4. 問いの歴史 ── ソクラテスの産婆術

2400年前、哲学者ソクラテスは答えを教えるのではなく、問いかけることで相手自身が答えに気づく方法を使いました。これを「産婆術」と言います。

産婆さんが赤ちゃんを「作る」のではなく「取り上げる」のと同じように、相手の中にある知恵を「引き出した」のです。

自分で考えた答えの方が記憶に残り、行動にもつながりやすい。これは現代の心理学でも確かめられています。

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1-5. 問いの質が関係の質を決める

お客さんに「何が欲しいですか?」と聞けないと、良い商品を作っても売れません。家族に「あなたはどうしたい?」と聞けないと、すれ違いが生まれます。

問いの質は、そのまま関係の質になります。

良い質問ができる人は、相手から信頼されます。相手の力を引き出し、お互いが成長する関係を作れます。質問をしない人は、どれだけ思いやりがあっても関係がうまくいきにくいのです。

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ワーク1:脳の検索エンジン体験 & 質問の言い換え道場

パートA:脳の検索エンジン体験

ステップ1

「今から10秒間、この部屋の中で赤いものをできるだけたくさん見つけてください」→ 10秒間、周囲を見回す

ステップ2

「では目を閉じてください。この部屋に青いものはいくつありましたか?」→ ほとんどの人が思い出せない

ステップ3

目を開ける。青いものがたくさんあることに気づく。

「赤いもの」を探しているとき、青いものは見えなくなっていました。脳は「問われたこと」だけを見つけようとします。だから、どんな質問を持つかで見える世界が変わるのです。

パートB:質問の言い換え道場

「なぜ?」型の質問を3つ書き出し、「どうすれば?」型に変換します。

「なぜ?」型「どうすれば?」型
(例)なぜ子供は言うことを聞かないんだろうどうすれば子供が自分から動きたくなるだろう
1.
1.
2.
2.
3.
3.
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パートB:質問の言い換え道場(続き)

ステップ2:ペアシェア

ペアでワークシートを共有します。

ステップ3:全体シェア

気づいたことを2〜3組、全体で共有します。

振り返りのポイント

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セクション2:心の中のひとりごとと「自分にはできる」という気持ち

2-1. 心の中のひとりごと

心がさまよっている時間が多いほど幸福感が低い、という研究結果があります。私たちの頭の中では、いつもひとりごとが流れています。

「ミスするな!」「ちゃんとやらなきゃ!」── こういう命令口調のひとりごとが多いと、体が固くなり、本来の力が出せません。ガルウェイという人は、頭の中に「うるさく指示する自分」と「本来の力を持つ自分」の2人がいると考えました。命令する自分を静かにさせると、本来の力が出てきます。

静かにさせる方法は、命令を質問に変えることです。


2-2. 自分のイメージが問いの質を決める

「私は人の話を上手に聴ける」と思っている人は、自然と良い質問が浮かびます。でも「私は口下手だ」と思っていると、どんなテクニックを学んでも使えません。

ポイント

「私は相手の力を引き出す良い質問ができる人間だ」。この新しい自分のイメージを、今日のワークで育てましょう。

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2-3. 「しなければならない」から「したい」へ

第3回でも取り組みましたね。今日はこれを「質問の力」でさらに深めます。

しなければならない(義務)したい(意欲)
報告書を書かなければチームに伝えたい
子供の送り迎えをしなければ子供との時間を大切にしたい
あの人に連絡しなければあの人との関係を良くしたい

言葉を変えるだけで、同じ行動でもやる気の質が変わります。「しなければ」に気づいたら、自分にこう問いかけてみてください。

「この行動の奥にある、私の本当の"したい"は何だろう?」

義務の奥には、必ず本当の「したい」が隠れています。それを見つけた瞬間、同じ行動がまったく違うエネルギーで動き出します。

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2-4. 「自分にはできる」という気持ち

「自分にはできる力がある」と信じられること。これが「"自分にはできる"という気持ち」です。自己肯定感(自分には価値がある)とは少し違い、まだやったことがなくても「自分ならできる」と信じられる力のことです。

「自分にはできる」を高める質問

1. 未来の自分から見る

2. 過去のうまくいった体験を引き出す

3. 強みを見つける


2-5. 朝の自分への問いかけ

毎朝、自分に1つ質問を投げかけるだけで、その日1日の「見え方」が変わります。

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ワーク2:ひとりごと書き換えシート

パートA:「しなければ」→「したい」変換

「しなければならない」を3つ書き出し、「したい」に変換してください。

#しなければならないしたい
毎日運動しなければならない健康でいたいから体を動かしたい
1
2
3

パートB:ネガティブなひとりごとの書き換え

頭に浮かびやすいネガティブなひとりごとを書き出し、質問と宣言に変換してください。

#ネガティブな
ひとりごと
問いかけに変換宣言
(「私は〜だ」の形)
私には才能がないどうすれば強みを活かせる?私には人の力を引き出す才能がある
1
2
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パートC:朝の自分への問いかけを作る

明日の朝から自分に投げかけたい質問を1つ作ってください。

私の朝の問いかけ:

?」

パートD:ペアシェア

パートA〜Cをペアで共有します。

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セクション3:良い質問の構造

3-1. 「あなたはどう思う?」の力

Aさん「最近、仕事が大変でさ」

Bさん「そうなんだ、大変なんだね」(聴く)

Bさん「それはきついね」(伝える)

Bさん(アドバイスを押し付けない)(守る)

Bさん「あなたはどうしたいと思ってる?」(引き出す)

このたった一言で、Aさんは「自分を尊重してもらえている」と感じます。

3-2. 3種類の問い

レベル1:事実の問い ── 何が起きた?

「何があったの?」「具体的にはどんな状況?」

レベル2:感情の問い ── どう感じた?

「その時、どんな気持ちだった?」「体のどこかに感じるものはある?」

レベル3:意味の問い ── あなたにとって何が大切?

「本当に大切にしていることは何?」「制約がなかったら、本当はどうしたい?」

この問いの後には沈黙が生まれます。焦らず待ちましょう。

気持ちが言葉にならない時は、体に聴く方法もあります。「今、体のどのあたりに何か感じますか?」と問いかけると、頭では気づけなかった本当の気持ちが見つかることがあります。

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3-3. 良い質問の5つの要素

#要素良くない例良い例
1自由に答えられる「良かった?」「どう感じた?」
2具体的である「最近どう?」「今週一番嬉しかったことは?」
3気持ちに向かう「何があったの?」「その時どんな気持ちだった?」
4未来に向かう「なぜそうなったの?」「これからどうしたい?」
5相手を信頼する「こうした方がいいよ」「あなたはどう思う?」

沈黙を味方にする

良い質問をすると、相手は考え込みます。この沈黙を怖がらないでください。沈黙は、相手が答えを探している大切な時間です。

沈黙 = 相手が考えている証拠 = 良い質問ができた証拠
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ワーク3:3人組の問いかけ練習

目的:質問だけで相手の考えを引き出す対話を体験する。

深い感情に触れることがあります。話したくないことは話さなくてOK。「パス」もいつでも使えます。

進め方

3人1組で、以下の役割をローテーションします。

役割やること
聴き手質問だけで相手の考えを引き出す。アドバイスはしない
話し手今気になっていること、考えたいことを話す
観察者2人のやりとりを観察し、気づきをメモする

聴き手の3つの心構え

  1. アドバイスしたくなったら質問に変える ── 「こうした方がいいよ」→「あなたはどうしたい?」
  2. 沈黙を恐れない ── 相手が黙ったら、考えている時間。待つ
  3. 答えは相手の中にあると信じる
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聴き手の質問カード

対話の始め方

「今日は何について話したいですか?」

「最近、気になっていることは?」

事実を聴く(レベル1)

「具体的にはどんな場面で?」

「もう少し聞かせてください」

感情を聴く(レベル2)

「その時、どんな気持ちでしたか?」

「今、体のどこかに何か感じますか?」

意味を聴く(レベル3)

「それはあなたにとってどんな意味がありますか?」

「本当に大切にしていることは何ですか?」

「自分にはできる」を高める

「理想の自分ならどうしますか?」

「前にうまくいった経験は?」

未来へ向ける

「本当はどうなりたいですか?」

「最初の一歩として何ができそう?」

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観察者の記録シート

観察ポイントメモ
聴き手はどんな質問をしていたか?
特に効果的だった質問はどれか?
3レベル(事実・感情・意味)のどれが多かったか?
話し手の表情や態度はどう変化したか?
沈黙の扱い方はどうだったか?
観察者の役割

当事者同士では気づけないことを見つけ、伝えること。フィードバックはまず良かった点を伝え、その後に気づきを共有しましょう。

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ワーク4:未来からの質問
ステップ1:理想の未来をイメージする

目を閉じて、1年後の理想の自分をイメージします。

イメージがありありと浮かぶほど、脳はそれを「現実」として受け取り始めます。すると脳の検索エンジンが「その未来に近づく情報」を優先的にキャッチするようになります。

ステップ2:未来の自分から今の自分へ

1年後の自分になりきって、以下に答えてください。

1年後の私から、今の私へ

一番伝えたいことは何?

今すぐ始めてほしいことは何?

手放していいものは何?

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本日のまとめ

1. 質問は脳の検索エンジンを動かす

2. 心の中のひとりごとが自分を作る

3. 3種類の問いを使い分ける

4. 問いかけ的な対話の力

4原則の全体像

核心
第1回聴く力心の余裕を持ち、相手の話を聴く
第2回伝える力「私は」を主語にして伝える
第3回守る力自分と相手の領域を尊重する
第4回引き出す力「あなたはどう思う?」で共に成長する
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振り返りシート

1. 今日一番印象に残ったことは何ですか?

2. 3人組の問いかけ練習で気づいたことは?

(聴き手として)

(話し手として)

(観察者として)

3. 明日から使いたい質問を1つ書いてください。

4. 今の「心の余裕」を%で表すと?

____% (第1回: ___% → 第2回: ___% → 第3回: ___% → 第4回: ___%)

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宿題

課題1:質問日記(1日1つ、自由に答えられる質問を使う)

段階的チャレンジ

1-2日目
家族に質問を1つ使う
3-4日目
職場や友人に使う
5-6日目
感情や意味の問い(レベル2-3)を意識して使う
7日目
朝の問いかけを試し、1日の変化を記録する

質問日記

日付誰に?どんな質問をした?相手の反応は?気づいたこと
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課題2:ディベートテーマ下調べ

次回(第5回)はディベートを行います。テーマについて賛成・反対の両方の立場から意見を考えてきてください。

テーマ:(講師より次回までに告知)

ブリッジ質問

「自分とは違う意見の人に出会ったとき、どんな質問を投げかけたいですか?」

次回予告:第5回 総合実践・ディベート(最終回)

4つの力を総動員して「相互尊重ディベート」に挑戦します。ここまでの4回で、あなたはもう準備ができています。


参考文献

© 一般社団法人 相互尊重コミュニケーション協会
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